日本進出を目指すスペインの精鋭ゲームクリエーター達が東京ゲームショウに集結!
この9月19‐22日に幕張メッセで東京ゲームショウ 2013が開催されたことは各種メディアに取り上げられ、すでに広く知られています。しかし、多くの人で賑わう東京ゲームショウの一角で「Games From Spain」と称し、スペインから来日したゲーム開発者の一団が待ちうけていた事はあまり知られていないようです。
本社をスペインに有する我々ソフトニックとしては、この「スペインつながり」を見逃すわけにはいきません。そこで、太陽と情熱の国スペインの情熱あふれるデベロッパー達から直接、普段目にする機会のない少ないスパニッシュゲームについて話を聞かせてもらうべく突撃取材を敢行しました。
日本のパブリッシャーとのビジネスチャンスを求めて自慢のゲームを引っ提げ日本までやってきくれた彼らは、皆「アポなし」にもかかわらずインタビューに快く、むしろ「俺の話をもっと聞いてくれ」と言わんばかりの勢いで応じてくれました。
Delirium Studios EvolutionDelirium Studios Evolutionはアニメ風のグラフィックが魅力的な「Kinito」ゲームシリーズのクリエイターです。今回はDeliriumのデベロッパーであるArturo Monederoさんにお話を伺いました。
写真:通訳を介しても人柄の良さがわかるDeliriumのArturoさん
Kinitoシリーズは魅力的なアニメ風グラフィックを備えており、遊び方も非常にシンプルなものばかりです。代表作である「Kinito Ninja」は横スクロール式のランニングゲームで、障害物や迫りくる敵を回避しながらひたすら走ります。スペイン語だけでなく日本語版もリリースされておりiPhoneとAndroidの両方でプレイできます。
「Kinito Music Puzzle」はプレーヤーが楽譜を落としてしまった指揮者となって、音楽の断片を組み合わせクラシックの名曲を完成させます。モーツアルトやベートーベンなどの有名曲がパズルになっているのでクラシックに詳しくなくても楽しめます。また「Kinito Sports」はオリンピック陸上の様々な競技に挑戦するゲームで、友人たちとオンラインで得点数を競い合うことができます。Deliriumは2020年の東京オリンピック開催にちなんで、この最新タイトルのパブリッシャーを日本で募集しています。
さらにArturoさんは特別に発売前の次回作品を見せてくれました。今年の10月にスペインでリリース予定の「The Rivers of Alice」は、美しい手書きのグラフィックとスペインの有名バンドVetusta Morlaの音楽を楽しめる新感覚のゲームです。画面上のオブジェクトに触れるとアニメーションと音楽が起動し、言葉のない豊かなアートの世界観の中、ストーリーが展開していきます。手書き風のグラフィックとアコースティック音楽で音楽と映像が融合する経験を作りだし、両者が有機的に交わった独特の雰囲気さえ漂うアプリでした。なおゲーム中の音楽はアプリの発売後CDとして発売され、別途購入することができるそうです。
FX Interactive
スペインで最も人気のあるゲーム開発会社の一つ、FX Interactiveのディレクター Victor Ruiz Tejedorさんとお話する機会に恵まれました。 「Mighty Freddy」という新作シューティングゲームのパブリッシャー探しが今回の来日の大きな理由だそうです。
写真:スペインゲーム界の重鎮Victorさん。ただならぬ風格があります。
Victorさんはご自身がデベロッパーでありながら、スペインのゲーム開発者協会(Spanish Games Developer Association)の副会長も務めています。協会が代表し、加盟16社とスペイン政府との間を取り持つ役割を担っているそうです。さらに彼は現在 “ホワイトブック”と呼ばれる、スペインのPC・スマートフォン用ゲーム業界全体の基本情報に関する文書を制作しています。
JOKOGA INTERACTIVE
Jokoga Interactiveは、気候変動と地球温暖化がテーマのアドベンチャーゲーム「Melt Down」を開発している会社です。アプリやモバイルゲームの世界ではあまり見られない社会意識の高いメッセージには目を見張るものがありました。
写真:JokogaのナイスガイJosuさんと盛り上がるSoftonicエディターChris
今回は日本でのパブリッシャーを求めて日本に旅してきたJosu Cobelo Echevarriaさんからゲームについてのお話を伺いました。「気候変動の問題は特定の地域や国を超えた問題であり、どの国でも共通して温暖化の影響によるストーリーがある」と語ってくれました。「Melt Down」の日本語版を作る機会を得られればストーリーそのものを日本向けに作り直し、日本の伝統などを取り入れたいそうです。Jokogaのロゴは地球の形をしたゲーム機をかたどっており、「ゲームを通して環境問題について考える機会を人に与えたい」というJosuさんのコンセプトを体現しているようです。
JANDUSOFT
JanduSoftのデベロッパー、Jose Antonio AndujarさんはFruit Ninjaに似たゲーム「Mariano Ninja」を見せてくれました。決定的な違いは刀で斬る標的が「フルーツ」の代わりに「悪徳政治家」という、風刺的な一面を持ち合わせている所でしょう。 写真:自社Tシャツが一段と似合うJoseさんと盛り上がるSoftonic エディターSayaka
Joseさんは「金と権力に飢えた政治家が社会保障をカットするから、ゲーム内では逆に政治家をカットするのさ」、と身振り手振りを交えて楽しそうに語ってくれました。少々バイオレンスな描写ではありますが、アニメ調のグラフィックも美しく、ゲームの完成度としてはFruits Ninjaに劣っていないようでした。日本の政治家がキャラクターとして登場する日本語版をつくりたいと語っていましたが、日本でのリリースはなかなか難しいかもしれませんよね。 写真:悪徳政治家を一刀両断 「Mariano Ninja」
Joseさんは他にもシンプルなパズルゲーム「Jewels Drop」や人気ボードゲームがモチーフのアプリゲーム「Guess The Character」を紹介してくれました。「Guess The Character」は「キャラクターを当てよう!」というタイトル名の日本語版も発表されており、AppStoreとGooglePlayからダウンロード可能です。 写真:キャラクターを当てよう!のキャラクターになんとなく見覚えがある気がする件
Abylight
Abylightの代表として東京ゲームショウに来場したEva Gasparさんからは、ニンテンドーDSi用に開発し、2014年にiOSとAndroidでもリリース予定の「AfterZoom」についてお伺いしました。 写真:Games From Spainの紅一点Evaさん
AfterZoomは実験室を管理しながら細菌やウイルスを見つけて培養、感染症の治療に役立つ発見をすることを目的とした知的要素もある育成ゲームです。ニンテンドーDSiショップで10万以上のダウンロードを記録したヒット作であり、マルチプラットフォームでのリリースとともに、日本を含む海外マーケットも視野に入れてユーザー層の拡大を目指しているそうです。
IRON BELT STUDIOS最後にIron Belt Studiosの創設者の一人、Axier Burdainさんとお話をする機会をいただきました。 Axierさんは2013年後半にスペインで発売予定の「Battle for Gea」というトレーディングカードゲームを紹介してくれました。「日本のアニメや他のゲームのグラフィックとは違った独特のものを作りたかった」との言葉の通り、キャラクターデザインは特にオリジナリティのあるものでした。
「トレーディングカードゲーム好きが作ったゲーム」というだけあってジャンル内での差別化のこだわりは他にもありました。既存のカードゲームではバトルに40分前後もかかってしまい、ちょっとした空き時間ではプレイできません。そこに目を付け、バトルの所要時間を大幅に短縮し約3分間でサクッとバトルが出来るように工夫したそうです。Axierは日本でのパブリッシャーを探しており、日本のユーザーが求めるのであれば、より日本ウケするグラフィックのスタイルに変更することも視野に入れているそうです。
写真:わが子を見るような愛情のこもった眼差しで自社ゲームを眺めるAxierさん
Games From Spainいかがだったでしょうか?スペイン人の情熱的な性格もあってか、彼らの作るゲームは個性的でメッセージ性が強いものが多かったような気がします。今度会うときはどんなパンチの効いたスペイン発のゲームを見せてくれるのか、来年の東京ゲームショウが今から楽しみです。